産業機械や動物、自然現象など様々な「動き」が氾濫する中で、造形作品にあらわれる動き(=仕草)を通して、純粋に動作がもたらす感情を鑑賞者が感じとることをめざしています。造形作品における動作は、生産的な必要に迫られたわけではなく、その点においては無意味な動作といえます。しかし、それ故に鑑賞者は動きを仕草として受けとり自由に思いを巡らせることが出来るのです。
独立して運動を行う物体はどことなく生物的です。
そして、その無意味で自由な仕草は、自分(あるいは鑑賞者)の意志と関係なく独立・完結しているほど個性的です。また、なんだか解らないけどうまく行くようになっているのだろうという様なBLACK BOXではなく、その構造や機構を、順を追って確認できる程度に単純明快なものほど興味深いのです。
BLACK BOX 化を避けた作品は、機械的な要素を露呈しますが、それは現代の機械・電子文明批判ではなく、また、とりわけ賛美するものでもありません。仕草を生み出す過程も一つの造形要素として積極的に扱うことで、素朴なからくりへの憧憬を抱ければと思うのです。
この知的好奇心と憧憬、仕草に応える感情を、考えること・感じることのきっかけとして、提起する作品の制作を展開しています。
「自重力シリーズ」では作品の自重(=重力)を利用したローテクによって、その位置エネルギーを視覚的に認識できる仕草として表出する作品の制作を試みています。心地よい時の流れとともに、見えない力を、造形作品を通して認識することの興味深さや、なぜ動いているのかという疑問に始まってその原理に至る過程を通して、考えることの面白さ、感じることの楽しさが伝わればと思います。
自重力Little: " Mii " /2011年 33×22×87(h)cm/真鍮・アルミ合金・ステンレス・他
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