今回主催である「唐崎やよい作業所」と「やまなみ工房」が位置する滋賀県は、障害者福祉の発祥の地と言われ、糸賀一雄氏をはじめ多くの重要人物を輩出し、
その理念と思想は現在も多くの施設に継承され、多大な影響を及ぼしている。長い年月の中、その功績において生まれた施策は、障害をもつ方々の人生を大きく
変える結果に結びついている。中でも障害のある人々の造形活動の取り組みは、全国でも最も歴史が深く、実践においてもそこから生み出された作品達も質が高く、現在各地で開催される様々な障害を持つ人々による作品展や施設での取り組みの潮流でもある。
過去20年にわたり、京都美術館にて10回(2年に1回)開催された「土と色」展では、田村一二氏や吉永太一氏らが中心となり、京都、滋賀の施設で生まれた作品
を一同に集め、多くの賛同と大きな足跡を残した。その切り拓いたからは、多くの大切な答えが出され、障害のある人々、その人々に携わる施設職員、そして作品に
対する考え方や生きる姿勢は最も重要で永遠に継承すべき事柄であろう。今回出展する「やまなみ工房」と「唐崎やよい作業所」は、その歴史からすると
造形においてはまだ10数年の年月しかたっていない、現在も答えを模索している途中の施設である。しかし、常に発達保障の理念を根底におき、一人一人を大切に日
常楽しく生活する中で、その人らしさを存分に発揮し、個性と個性がぶつかり合う。
互いを尊重し、深い人間関係の中から生まれた作品は、生きるという人生の質を深
める事と比例して今も次々に陶芸や絵画の作品が生まれる。
多くの敬愛する先輩や実践を追及しつつも、自分達のアレンジを交え、自分達の実践を追及する。この二施設は、長い歴史においてまさしくこれからの「New Face」
である。そしてそこから生まれる作家や作品達もまたこれまたユニークで類のないNew Faceである。今回の展覧会にはそんな今もあふれんばかりのエネルギーに満ちた作品をもちより、
展示する事で新たな道を社会の中で創り出すのだ。 |